神棚
新住協関西プレゼンツYouTubeライブ、毎週月曜日20時から、今回の視聴者さんからのご質問に神棚に関していただきました。ご質問では、神棚の施工事例などがあれば見せていただけると助かります、また注意点などあれば教えてください、とのことでした。設計をしていると、神棚やお仏壇など要望の中に出てきますよね。私も、神仏については大切にしているところでありますので、しっかりヒアリングしながらスペースや場所など、どこが適しているのか考えています。例えば、仏さんは和室に設えたり、神棚はキッチンの上部南向きに設置したり、通例としてはこのような場所に来ることが多いんですが、ただその想いによって適度な場所でよいと思います。宗教のことですから、皆さんそれぞれの考え方があるのと、暮らしの傍らにある場所の方が、良いと思うんですよね。
今回は、神棚をこだわったお家を紹介させていただきます。こちらのお家は建て替えでした。築50年のお家を解体しての新築計画でした。計画段階では、既存のお家をリノベして耐震や断熱気密の性能リノベでよみがえらせる案もありましたが、性能やメンテナンス、費用対効果、資産価値や建築総予算など様々な項目に関して検討した結果の新築建築という選択に至りました。そんなことで、これまでの既存のお家の何かを新築工事に活かしたいということで、解体工事の時に、材料を生け捕りしました。大きな和室もあったのですが、次に使うことを考えながら材料を選りすぐりました。床の間の造作材などが候補として挙げられましたが、私たちが目を付けたのが2階の畳下の地板でした。現代では床下地は構造用合板で施工することが多いのですが、このころは無垢材の平板を使っていました。しかもこちらのお家はおそらく桜の地板で、これは磨けばよいものになるのでは、と考えました。
そして、その地板をどこに使うのかを検討した結果、神棚の背面の仕上げ材にどうかというお話になりました。こちらのお家では、神棚をどこに設えるのか、を検討した結果、リビングのTV台の上に決まっていたのです。リビングのTV台の上というと家の中でもメインな場所。でも、普段の暮らしの中に信仰する神棚があって生活が展開するって素敵だなと思います。基本は好きなものに囲まれて暮らすということだと思いますが、それは人それぞれ違ってそこにこだわりも生まれてきます。
生け捕りされた桜の地板を、一枚一枚プレーナーを通して製材してゆきます。古かった地板が生き返る瞬間です。グレーだった地板がピンクの壁材に蘇ります。それらを丁寧に貼ってゆきます。神棚には奈良県吉野産のヒノキの一枚板です。リビングの空間に1本横に通る線が空間を引き締めます。引渡後、お施主さんと少し飲みましょうということでお伺いした時、神棚は暮らしの中心にありました。
神棚をテーマに書きましたが、結局家づくりの中で大切な、「好きなものと暮らす」というお話になってしまいましたが。家づくりの中で、家族の個性が滲み出る家って良いと思うんですよね。